*キラキラのどろんこLife*

年の差三姉妹のお母ちゃん、睦です。 ちょっと若く見られるのは自慢ですが、しっかりアラフォーで体力の衰えが半端ないのは悩みの種。 先天性心疾患「左心低形成症候群(HLHS)」の三女、小5長女、小3次女(通称:姉ちゃんズ)がいます。 3年間続いた夫のギャンブルで家計も夫婦仲もガタガタ、現在5つのローンを背負って嵐の中を突き進めているのかどうか。 いろんなことをぶっちゃけながらも、自分らしく前進あるのみと心に誓っています。 迷走していることに気づいたら、お声掛けいただけると喜びますが、そっと見守ってくださる







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【三女の心疾患】1万分の1の確率、先天性心疾患・左心低形成症候群(HLHS)について。

「何らかの重い心疾患を必ず持って産まれてきます」

 

頭が真っ白になる、とは言いますが。あの時の私は、目の前から一気に彩りが失われたような気がしました。

色褪せてしまったとても静かな空間で、突然日常から切り離されてしまった、絶望、恐怖、悲しみ、そして強い強い罪悪感。どんなに歯を食いしばっても、嗚咽が漏れるという経験をしたのは初めてでした。

 

こんにちは、睦です。

今日は三女の心疾患についてお話しようと思います。

三女の心疾患は「複雑心奇形」と呼ばれるものですが、疾患名は同じであっても細部や症状はそれぞれでかなり違います。この疾患と判断される代表的な所見と、三女ならではの部分に分かれます。

 

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少し難しく、そして長いお話になります。ご了承ください。

 

**目次**

 

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先天性心疾患「左心低形成症候群」について

先天性心疾患の確率

先天性心疾患は、100分の1の確率で発症すると言われています。100人に1人ですから、決して遠い世界の話でも他人事でもありません。

三女を出産後、疾患のことも併せて報告した数人から「実はね」と聞きました。やはり「そのくらい」の確率でした。

 

左心低形成症候群(HLHS:Hypoplastic Left Heart Syndrome)は、その中で更に100分の1・・・つまり1万分の1(難病情報センターのホームページによると、1.2~1.6%)の確率だそうです。

大学病院で聞いた話では、北海道では年2~3人*1です。

 

左心低形成症候群は指定難病

左心低形成症候群は、厚生労働省の指定難病です。

一生根治することはありません。

 

  • 左心室の低形成
  • 僧帽弁の狭窄、閉鎖
  • 大動脈弁の狭窄、閉鎖
  • 上行大動脈の低形成
  • 卵円孔(心房中隔欠損の場合も)の開存
  • 冠動脈への逆行

 


心臓は4つ(右心房・右心室・左心房・左心室)に分かれていて、左側が体循環、右側が肺循環を担っています。

 

血液が心臓を出て全身に至り、毛細血管を経て再び心臓に戻ってくる循環を体循環といいます。

一方、心臓を出て肺を通り心臓に戻る循環を肺循環といいます。

 

体循環と肺循環|解剖・病態編(テキスト解説)|循環器疾患講座|Adalat.jp

 

左心低形成症候群は、名前の通り左心室の低形成があります。全身に血液を送るためのポンプ部分が低形成です。

左心房と左心室との間の弁(僧帽弁)の狭窄や閉鎖、左心室から繋がる上行大動脈への弁(大動脈弁)の狭窄や閉鎖、上行大動脈と大動脈弓の低形成があります。

 

そして卵円孔や心房中隔欠損*2による、心房間交通*3があることが大半です。卵円孔は胎児期には誰にでもあるもので、生後まもなく閉じてしまいます。

 

 

おなかの中で心臓が作られる時期に、左右にバランスよく血流が流れなくて、偏りができてしまったことで起こるんじゃないかと。

遺伝的な要素がある場合はもちろんありますけど、モモちゃんの場合その可能性はありません。大丈夫です!

 

 

 

左心室や弁の形成には個人差があり、三女の弁はどちらも閉鎖しています。

僧帽弁の閉鎖→左心室への流入がない→上行大動脈に血液が流れていかない→低形成、となるようです。

 

最重度の心疾患である理由

肺できれいになった血液は左心房に戻ってきて、左心室へと送られて、大動脈を通って全身に流れていくのが通常です。

 

心臓のきほん1.心臓はどこにあるの?どんなかたちをしているの?【東京女子医科大学 心臓血管外科】


それが左心室がなければ、肺から戻ってきた血液の行き場はありません。体循環がなければ戻ってくる血液もなくなりますから、肺循環もなくなります。

血液が巡らない=死、です。

 

ただ前述したように、心房間交通があります。

左心房から右心房へと血液が流れていき、きれいな血液(動脈血)と汚れた血液(静脈血)が混ざったまま、右心室から肺に送られます。心房間交通が狭い場合には、バルーンなどで広げる処置も必要とのことですが、三女は必要ありませんでした。

 

胎児期に生存できる理由

産まれたばかりの赤ちゃんには、動脈管というものがあります。大動脈弓*4と肺動脈*5を繋ぐ血管です。

右心房から肺動脈を流れて肺に送られる途中で、動脈管を通って大動脈(大動脈弓・下行大動脈)へと分岐していくため、体循環が守られます。

そして通常とは逆行する形で、上行大動脈へと血液が流れて冠動脈へと送られます。

 

 

大抵の場合は生後間もなく閉じてしまうものですが、これをプロスタグランジンという点滴で開存させておくことで、生存が可能になります。

ただし効果は平均3ヶ月です。

他にも動脈管を開存させるだけなら、ステント留置という方法もあります。

 

それだけでは生存できない理由

左心低形成症候群は、肺血流増加型の心疾患です。

生後4~5日経つと肺血管抵抗が下がり、肺に血液が流れやすくなります。肺血流が増加してくると、逆に全身への血流量は乏しくなってしまうのです。

 

  • 壊死性腸炎
  • 尿量減少
  • 浮腫
  • 肺うっ血
  • 心不全

 

この時期には、血中酸素濃度(SpO2)も一気に80前後まで下がります。チアノーゼ性心疾患でもあります。

 

逆行する形で冠動脈へと送られる血液は、動脈血と静脈血の混ざったものです。

本来であれば左心房から上行大動脈へ送られた直後に、大動脈弁の直上にある冠動脈へと流れていかなければいけません。

心臓にも血液は必要で、冠動脈は心筋に酸素や栄養を送ります。それがままならないということは、とにかく危険です。

 

この疾患は、循環(血行)動態の管理が極めて難しいものです。

妊娠中にわからなかった場合、処置が遅れて亡くなるケースや、手術まで持たないことも少なくないと聞きました。手術まで持ったとしても予後が余りよくなく、長期生存はまだまだ難しいとされています。

 

現に10~15年前には、ほとんどが助かりませんでした。

 

三女の治療経過

両側肺動脈絞扼術

緊急帝王切開で出産した直後から、保育器に入り、NICUでの治療を開始しています。

生後0日目 プロスタグランジンの点滴を開始

生後4日目 総合病院から大学病院へ転院

生後5日目 肺血流増加のため「低酸素(窒素)治療」を開始

生後8日目 壊死性腸炎の疑いのため絶食管理

生後17日目 気管挿管

生後19日目 敗血症

生後37日目 内科的治療限界のため急変

生後39日目 緊急手術にて両側肺動脈絞扼術


両側肺動脈絞扼術(肺動脈バンディング)とは、肺血流増加型の単心室・単心室症に対する姑息術になります。

単心室とは、左右の心房の片方がない、もしくは十分な大きさがない。つまり機能する心室が1つしかない状態です。三女にも、機能していない小さな左心室があります。

 

肺動脈に10mm程度のバンドをかけて、0.1mm単位で調節します。肺血流をコントロールすることで体循環とのバランスを取るものです。

この手術を受けずに、次のノーウッド(ノルウッド)手術を受ける場合もあるようですが、肺動脈絞扼術を受けた方が次の成功率が上がるのだそうです。

心臓の元気度を測るBNPの値(基準値は18.4pg/ml)が、この当時の三女は5000~6000pg/mlだったと聞きました。

 

ノーウッド・グレン手術

プロスタグランジンの効果がいつまで持つのか。医師も慎重に経過を見ながら、体重増加のために試行錯誤してくれました。

最終的には3ヶ月を大きく越えて、生後5ヶ月でノーウッド手術と同時に、両方向性グレン手術という、その次の手術も同時に行えることになりました。

プロスタグランジンの効果だったのか、動脈管開存症だったのかはわかりません。

 

ノーウッド手術は、術後1ヶ月間の生存率が60~70%程度と、心臓手術の中では抜きん出て成功率の低く難しいものです。そこに両方向性グレン手術を合わせると、術後は安定しやすい代わりに、難易度が上がるとのことでした。

 

両側肺動脈絞扼術の際に、執刀医から聞いた話です。

こちらで行われたノーウッド手術は、18件(2015年9月当時)

そのうち亡くなられた子は1人、肺の低形成があったそうです。それ以外の17人は元気になって、大きくなっているとのことでした。その後、三女の前に2人がノーウッド手術を受けて元気になっています。

 

インターネットなどで検索しても「先天性心疾患の中では最重度」「手術成績は良好ではない」「予後不良」などという、よくない情報ばかりが出てくる左心低形成症候群です。

もちろん執刀医や医療機関によっての差は、もちろんあるでしょう。それでも「希望を持っていいんだ」と思えるほどに、医療は進んできているのだと感じられた出来事がありました。

こちらに関しては、『これからのこと』で後述します。 

 

ノーウッド手術で、右心側で体循環を担える形に作り替えます。肺動脈と低形成の上向大動脈を繋ぎ合わせ、新たに上行大動脈を形成します。

三女は左上大静脈遺残というものがあり、これも胎児期の血管の名残です。三女は(右)上大静脈もありますが、どちらも通常より細いのだそうです。

それをどちらも肺動脈と繋げています。

 

複雑心奇形は、人それぞれでかなり違います。看護師さんはこう言っていました。

 

 

 

最初の分化で間違っちゃったんだから、他にたくさん間違いがあっても仕方がない

 

 

 

最終的にはフォンタン手術にて、フォンタン循環を目指します。

右心室を体循環に使用するため、本来右心室で行われる肺循環は「心臓を通さずに直接肺へと送る」ことになります。

肺動脈に上大静脈を繋げ、上半身のチアノーゼを解消するのが両方向性グレン手術。下大静脈を繋げ、下半身のチアノーゼを解消するのがフォンタン手術です。

これらの手術は開心術*6で、合併症などのリスクもとにかく高いものです。ノーウッド・グレン手術は、予定時間が10時間でした。

 

三女がノーウッド手術を単発で受けられなかった理由

左心低形成症候群での大動脈の太さは、3mmを基準にしていて、2mm未満だと成功率はかなり低いと聞いていました。三女は11月のCT検査時点で、内径2mm。

20例ほど手術の実績がある大学病院でも、とても難しい手術になると。IC*7では「心して行わなれればならない」と、ハッキリ告げられました。

そしてこの血管の細さだと、ノーウッド手術時に人工血管を使って肺血流を作った場合*8、冠動脈への血流が乏しくなり、心筋梗塞を起こす可能性がありました。

上行大動脈が低形成なら、冠動脈も低形成です。

ノーウッド手術の術後1ヶ月生存率が低いのは、このバランスを取るのが難しいところにあります。

 

有り得ないほどに状態が安定していた三女、この当時のBNPは50~100pg/ml程度でした。そこで手術を1ヶ月延期して、2mmを超えるまで体重増加(3500g→最低4000g)を目指すことになりました。

同時に両方向性グレン手術をすることで、人工血管は使わずに済みます。上大静脈を肺動脈に直接繋ぐことで、冠動脈への血流を維持できます。

 

この時点で、肺動脈の太さは14mm、心臓の大きさはいちご大程度。0.1mmが結果を左右する、全く想像もできない世界です。

 

低出生体重児というハイリスク

通常だと、生後数日で両側肺動脈絞扼術、1ヶ月以内にノーウッド手術が行われます。

しかし三女は1688gの低出生体重児。

両側肺動脈絞扼術までの目標体重は2200gでした。この500~600gでさえ到達はかなり難しいと見られていて、転院後のICで「助かる確率は50%」と言われて涙が出ました。

 

3時間毎に20cc程度の母乳を、シリンジポンプを使って1時間かけて注入していました。そうでなければ、消化の際に負担が大きかったのです。体重増加のために、脂肪の点滴などもしていました。

 

後に「NICUの看護師から、かなり大変だったと聞いています」と小児科で言われていますし、小児循環器の医師達も「NICUで先生達が頑張ってくれたから」と何度も言っていました。

奇跡の連続です。

術後、主治医から「強運の持ち主」と言われた三女。

 

www.kiradoro-life-child.net

 

小児科では、ミルクの濃度を上げたものや、「MCTパウダー」と呼ばれる、消化吸収がよくエネルギーになるものを添加して飲ませていました。MCTパウダーを添加してからの体重増加には驚かされました。

 

術後の合併症

術後8日目に、乳び胸水がわかりました。

胸管が傷ついたことにより、乳び*9が漏れてしまい、胸腔内に溜まる状態です。治療は状態や施設によって多少変わるようです。三女の場合は、以下のように進みました。

 

  • MCTミルク→効果なし
  • サンドスタチン点滴→効果なし
  • 胸管結紮術+術後絶食

 

術後8日目 乳び胸水の診断

術後8日目~93日目 MCTミルク使用

術後12日目~25日目 サンドスタチン*10点滴

術後25日目 胸管結紮術

術後25日目~31日目 ICUにて絶食管理

 

退院後もMCTミルクは2ヶ月弱続きました。

これは治療用ミルクなのですが、薬扱いにはならないため医療費の還付対象にはなりません。全額自己負担です。

とても消化がよく2時間置きに120cc飲んでいたのですが、1缶が3日半でなくなります。

 

ドラッグストアなどでは市販されておらず、通販で1缶3700円前後、全部で15缶買いました。

 

明治MCTフォ-ミュラ 350g

明治MCTフォ-ミュラ 350g

 

 

乳び胸水は繰り返しやすいようなので、次の手術時にならないことを切に願っています。

 

これからのこと(2017.06現在)

三女は生後211日目で退院しました。

 

2017年5月に心臓カテーテル検査を受け、8月にはフォンタン手術も予定されています。目標体重であった10kgも無事に超えることができ、月1回の定期健診と服薬でとても元気に過ごしています。

冬期間の外出は控えていたものの、幸い酷い風邪をひくこともありませんでした。

 

www.kiradoro-life.net

 

この心臓カテーテル検査を境に、私も心の持ち方が変わりました。

現在の状態、疾患に関する考え方など、詳細はこちらをご覧いただければと思います。

 

最後に(2017.02当時のまま残します)

私達は「三女を見送る」ことになる可能性が高いです。

 

長女も次女も、受け入れることはできていないかもしれませんが、理解はしてくれています。三女が1日も長く元気で、そして1日も長く生きてくれますように、そう毎日毎日祈りながら生活しています。

三女と出会えたこと、家族になれたことは、人生最高の喜びです。彩りが失われたと感じた世界は、以前より輝いていて充実しています。

 

まずは、こういう疾患があることを知ってほしいと思っています。

*1:北海道の年間出生数は3万人台

*2:俗に言う「心臓に穴が開いている」という状態

*3:左心房と右心房の間に穴が開いている

*4:上行大動脈と下行大動脈の間にある弓状の部分

*5:右心室から肺へと流れていく血管

*6:人工心肺を使う

*7:インフォームド・コンセント

*8:BTシャント術

*9:乳白色のリンパ液

*10:ホルモン剤

©2016 *キラキラのどろんこLife*