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*キラキラのどろんこLife*

かわいい三姉妹と4つのローン、背負うものはたくさんあるけど前進あるのみ!







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【三女の心疾患】1万分の1の確率、先天性心疾患・左心低形成症候群について。

「何らかの重い心疾患を必ず持って産まれてきます」

 

頭が真っ白になる、とは言いますが。あの時の私は、目の前から一気に彩りが失われたような気がしました。

色褪せてしまったとても静かな空間で、突然日常から切り離されてしまった、絶望、恐怖、悲しみ、そして強い強い罪悪感。どんなに歯を食いしばっても、嗚咽が漏れるという経験をしたのは初めてでした。

 

こんにちは、睦です。

今日は三女の心疾患についてお話しようと思います。

三女の心疾患は「複雑心奇形」と呼ばれるものですが、疾患名は同じであっても細部や症状はそれぞれでかなり違います。この疾患と判断される代表的な所見と、三女ならではの部分に分かれます。

 

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少し難しく、そして長いお話になります。ご了承ください。

 

**目次**

 

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先天性心疾患「左心低形成症候群」について

先天性心疾患の確率

先天性心疾患は、100分の1の確率で発症すると言われています。100人に1人ですから、決して遠い世界の話でも他人事でもありません。三女を出産してから数人から「実はね」と聞き、やはり「そのくらい」の確率なのだなと実感しました。

三女の心疾患はその中で更に100分の1、つまり1万分の1(難病情報センターのホームページによると、1.2~1.6%)の確率だそうです。 大学病院で聞いた話だと、北海道では年2~3人(北海道の出生数は3万人台)と聞きました。

 

左心低形成症候群は指定難病

左心低形成症候群は厚生労働省の指定難病で、一生根治することはありません。

  • 左心室の低形成
  • 僧帽弁の狭窄、閉鎖
  • 大動脈弁の狭窄、閉鎖
  • 上行大動脈の低形成
  • 卵円孔(心房中隔欠損の場合も)の開存
  • 冠動脈への逆行


心臓は4つ(右心房・右心室・左心房・左心室)に分かれていて、左側が体循環、右側が肺循環を担っています。

左心低形成症候群は、名前の通り左心室の低形成があります。

全身に血液を送るためのポンプ部分が低形成です。左心房と左心室との間の弁(僧帽弁)の狭窄や閉鎖、左心室から繋がる上行大動脈への弁(大動脈弁)の狭窄や閉鎖、上行大動脈と大動脈弓の低形成があります。

そして卵円孔や心房中隔欠損(俗に言う「心臓に穴が開いている」という状態)による、心房間交通があることが大半です。左心房と右心房の間に穴が開いています。卵円孔は胎児期には誰にでもあるもので、生後まもなく閉じてしまいます。

 

医師の話によると、心臓が形成される胎児期に、血流に偏りがあったことで起こるのではないかとのことでした。遺伝的な要素がある場合もありますが、三女に関してはその可能性は0と言われています。

 

左心室や弁の形成には個人差があり、三女の弁はどちらも閉鎖しています。

僧帽弁の閉鎖→左心室への流入がない→上行大動脈に血液が流れていかない→低形成、となるようです。

 

最重度の心疾患である理由

肺できれいになった血液は左心房に戻ってきて、左心室へと送られて、大動脈を通って全身に流れていくのが通常です。
それが左心室がなければ、肺から戻ってきた血液の行き場はありません。体循環がなければ戻ってくる血液もなくなりますから、肺循環もなくなります。
血液が巡らない=死、です。

ただ前述したように、心房間交通があります。

左心房から右心房へと血液が流れていき、きれいな血液(動脈血)と汚れた血液(静脈血)が混ざったまま、右心室から肺に送られます。心房間交通が狭い場合には、バルーンなどで広げる処置も必要とのことですが、三女は必要ありませんでした。

 

胎児期に生存できる理由

産まれたばかりの赤ちゃんには、動脈管という大動脈弓と肺動脈を繋ぐ血管があります。右心房から肺動脈を流れて肺に送られる途中で、動脈管を使って大動脈(大動脈弓・下行大動脈)へと分岐していくため、体循環が守られます。

そして通常とは逆行する形で、上行大動脈へと血液が流れて冠動脈へと送られます。

 

大抵の場合は生後間もなく閉じてしまう動脈管ですが、これをプロスタグランジンという点滴で開存させておくことで、生存が可能になります。ただし効果は平均3ヶ月です。

他にも動脈管を開存させるだけなら、ステント留置という方法もあります。

 

それだけでは生存できない理由

生後4~5日経つと肺血管抵抗が下がり、肺に血液が流れやすくなります。

肺血流が増加してくると肺にばかり血液が流れてしまい、全身への血流量が乏しくなってしまうのです。これが原因で壊死性腸炎が起こったり、尿量が落ちて浮腫が出たり、肺うっ血や心不全になってしまいます。

この時期には、血中酸素濃度(SPO2)も一気に80前後まで下がります。

 

逆行する形で冠動脈へと送られる血液は、動脈血と静脈血の混ざったものです。

本来であれば左心房から上行大動脈へ送られた直後に、大動脈の根元にある冠動脈へと流れていかなければいけません。冠動脈は心筋に酸素を送りますから、それがままならないということはとにかく危険です。

 

この疾患は、循環(血行)動態の管理が極めて難しいものです。

妊娠中にわからなかった場合、処置が遅れて亡くなるケースや、手術まで持たないことも少なくないと聞きました。手術まで持ったとしても予後が余りよくなく、長期生存はまだまだ難しいとされています。

 

現に10~15年前には、ほとんどが助かりませんでした。

 

三女の治療経過

両側肺動脈絞扼術

緊急帝王切開で出産した直後から、保育器に入り、NICUでの治療を開始しています。

生後0日目 プロスタグランジンの点滴を開始

生後4日目 総合病院から大学病院へ転院

生後5日目 肺血流増加のため「低酸素(窒素)治療」を開始

生後8日目 壊死性腸炎の疑いのため絶食管理

生後17日目 気管挿管

生後19日目 敗血症

生後37日目 内科的治療限界のため急変

生後39日目 緊急手術


生後39日目に受けた手術は「両側肺動脈絞扼術」です。
肺動脈に10mm程度のバンドをかけて、0.1mm単位で調節します。肺血流をコントロールすることで体循環とのバランスを取るものです。この手術を受けずに、次の「ノーウッド手術」を受ける場合もあるようですが、肺動脈絞扼術を受けた方が次の成功率が上がるのだそうです。

心臓の元気度を測るBNPの値(基準値は18.4pg/ml)が、この当時の三女は5000~6000pg/mlだったと聞きました。

 

ノーウッド・グレン手術

プロスタグランジンの効果がいつまで持つのか。医師も慎重に経過を見ながら、体重増加のために試行錯誤してくれました。

最終的には3ヶ月を大きく越えて、生後5ヶ月で「ノーウッド手術」と同時に「両方向性グレン手術」という、その次の手術も同時に行えることになりました。プロスタグランジンの効果だったのか、動脈管開存症だったのかはわかりません。

 

ノーウッド手術は、術後1ヶ月間の生存率が60~70%程度と、心臓手術の中では抜きん出て成功率の低く難しいものです。そこに両方向性グレン手術を合わせると、術後は安定しやすい代わりに、難易度が上がるとのことでした。

ノーウッド手術で右心側で体循環を担える形に作り替えます。肺動脈と低形成の上向大動脈を繋ぎ合わせ、新たに上行大動脈を形成します。両方向性グレン手術では、上半身のチアノーゼを解消します。

 

三女は「左上大静脈遺残」というものがあり、これも胎児期の血管の名残です。三女は(右)上大静脈もありますが、どちらも通常より細いのだそうです。それをどちらも肺動脈と繋げています。

 

複雑心奇形が人それぞれでかなり違うのは、看護師さんの言葉を借りると「最初の分化で間違っちゃったんだから、他にたくさん間違いがあっても仕方がない」のだそうです。

最終的にはフォンタン循環(下半身のチアノーゼを解消する)を目指します。右心側を体循環に使用するため、本来右心側で行われる肺循環は「心臓を通さずに直接肺へと送る」よう、肺動脈に直接上大静脈と下大静脈を繋げます。

これらの手術は人工心肺を使う「開心術」で、合併症などのリスクもとにかく高いものです。三女が受けたノーウッド・グレン手術は、予定時間が10時間でした。

 

三女がノーウッド手術を単発で受けられなかった理由

左心低形成症候群での大動脈の太さは、3mmを基準にしていて、2mm未満だと成功率はかなり低いと聞いていました。
三女は11月のCT検査時点で、内径2mmと成功率の低いグループでした。20例ほど手術の実績がある大学病院でも、難しい手術になると。ICでは「覚悟して行わなれればならない」と、ハッキリ告げられました。

そしてこの血管の細さだと、ノーウッド手術時に人工血管を使って肺血流を作った場合(BTシャント術)に、冠動脈への血流が乏しくなり、心筋梗塞を起こす可能性があるとのことでした。上行大動脈が低形成なら、冠動脈も低形成です。

この疾患の中では、有り得ないほどに状態が安定していた三女。

この当時のBNPは50~100pg/mlまで落ち着いていました。手術を1ヶ月延期して、2mmを超えるまで体重増加(3500g→最低4000g)を目指しました。

そして人工血管で肺血流を作らず、両方向性グレン手術で上大静脈を肺動脈に直接繋ぐことで、冠動脈への血流を維持します。

 

この時点で、肺動脈の太さは14mm、心臓の大きさはいちご大程度。0.1mmが結果を左右する、全く想像もできない世界です。

 

低出生体重児というハイリスク

本来だと生後数日で両側肺動脈絞扼術、1ヶ月以内にノーウッド手術が行われます。しかし三女は1688gの低出生体重児。両側肺動脈絞扼術までの目標が2200g、到達はかなり難しいとのことで「助かる確率は50%」と言われました。

3時間毎に20cc程度の母乳を、シリンジポンプを使って1時間かけて注入していた三女。そうでなければ、消化の際に負担が大きかったのです。それで大きくなることが難しいのは容易に想像ができます。

体重増加のために、敗血症の時期を除いて、脂肪の点滴などもしていました。

 

後に「NICUの看護師から、かなり大変だったと聞いています」と小児科で言われていますし、小児循環器の医師達も「NICUで先生達が頑張ってくれたから」と何度も言っていました。奇跡の連続です。

小児科では、ミルクの濃度を上げたものや、「MCTパウダー」と呼ばれる、消化吸収がよくエネルギーになるものを添加して飲ませていました。MCTパウダーを添加してからの体重増加には驚かされました。

 

術後の合併症

術後8日目に「乳び胸水」がわかりました。

胸管が傷ついたことにより、乳び(乳白色のリンパ液)が漏れてしまい、胸腔内に溜まる状態です。治療は状態や施設によって多少変わるようです。三女の場合は、以下のように進みました。

  • MCTミルク→効果なし
  • サンドスタチン点滴→効果なし
  • 胸管結紮術+術後絶食

という経過でした。

 術後8日目 乳び胸の診断

 術後8日目~93日目 MCTミルク使用

 術後12日目~25日目 サンドスタチン点滴

 術後25日目 胸管結紮術

 術後25日目~31日目 ICUにて絶食管理

 

退院後もMCTミルクは2ヶ月弱続きました。これは治療用ミルクなのですが、薬扱いにはならないため医療費の還付対象にはなりません。全額自己負担です。

とても消化がよく2時間置きに120cc飲んでいたのですが、1缶が3日半でなくなります。ドラッグストアなどでは市販されておらず、通販で1缶3700円前後、全部で15缶買いました。

乳び胸水は繰り返しやすいようなので、次の手術時にならないことを切に願っています。

 

これからのこと

三女は生後211日目で退院しました。

今の予定では、2歳の誕生日を迎える前後に、フォンタン手術を予定しています。それを見据えて、春以降に心臓カテーテル検査(入院)もあります。

今は手術に適した体躯になるまで(目標体重は10kg)、月1回の定期健診と服薬で過ごしています。感染症は重症化しやすいため、10月以降は週末の買い出しと学校行事以外は外出を控えています。

 

フォンタン循環での生存期間は段々と長くなってきています。

しかし左心低形成症候群に関しては、具体的な情報は少なく、どのくらい成人した人がいるのかもわかりません。調べた限りでは、国内での最長は20代前半とのことでした。

それでも数年前の情報と比較すると、「よりよく生きる」ことを目指せるようにはなってきた印象があります。医師からも「小学生のうちは、好きなこと(運動など)をやらせてあげて大丈夫です」と言われています。

 

今、気になっているのは「フォンタン術後症候群」と呼ばれる合併症です。

 

私達は「三女を見送る」ことになる可能性が高いです。

長女も次女も、受け入れることはできていないかもしれませんが、理解はしてくれています。三女が1日も長く元気で、そして1日も長く生きてくれますように、そう毎日毎日祈りながら生活しています。

三女と出会えたこと、家族になれたことは、人生最高の喜びです。彩りが失われたと感じた世界は、以前より輝いていて充実しています。

 

まずは、こういう疾患があることを知ってほしいと思っています。

©2016 *キラキラのどろんこLife*